事業報告

 2019年度 現代的課題対応研修

人生100年時代での社会教育が果たす役割〜高齢者が活躍するために〜

 
 期 日  令和元年10月10日(木)  10:00〜15:50
 参加者   85名
 事業内容
 長寿社会において「高齢者が活躍できる社会の実現」をテーマに、多様な主体が連携・協働した「学びの循環」を通して、高齢者が知識や経験を地域に還元し、様々な場面で活躍できるようにする仕組みづくりについて考える機会とする。
 内容の実際

【説 明】「あなたも私も人生100年!元気で魅力的な『幸齢者』のつくり方」について

 説明者  研修・情報室 社会教育主事
 本研修会のテーマについて、人生100年時代に向けた新しい高齢者観や価値観を示すとともに、「誰もが安心して年がとれる」、「年をとっても幸せに生活できる」といった「幸齢社会」を目指すためには仕組みづくりが必要であること、「幸齢社会」で生きる人が「幸齢者」になれること等を説明しました。

【研修1】〈事例発表〉(事例発表@)
「いくつになっても学ぶ幸せ」〜高齢者の学びを地域で活かす「ちくしの高年大学」〜

 発表者: 筑紫野市教育部生涯学習課 係長 森田 健太郎 氏
  社会教育指導員 池田   誠司 氏
 筑紫野市生涯学習課係長の森田健太郎氏と社会教育指導員の池田誠司氏には、高齢者への学習機会の提供と活躍の場づくりについて「ちくしの高年大学」の取組を発表していただきました。
 今年度19年目を迎える「ちくしの高年大学」の目的は、市内在住の60歳以上の市民を対象として生涯を通じた「いきがい・やりがい」を見つけるための学習の機会と活躍の場の提供です。高齢者の学習機会の提供としては、高年大学は受講生が主体的に大学を自主運営しており、教養講座(年6回)と専門講座(年13回)を行っています。また、高齢者の活躍の場としては、筑紫野市高年クラブ(6ヶ所)を「ちくしの高年大学」修了者の受け皿として設立し、現在は、高年大学の修了者と地域の高齢者によって組織されていると説明がありました。
 平成13年の開校から1,000人を超える受講生が高年大学を受講しており、高齢者の学びのきっかけや仲間づくりをはじめ、世代間交流の場、高齢者の健康づくりに貢献しており、学びとボランティア活動の継続は、地域で活躍できる人材の育成につながっているとお話がありました。

(事例発表A)
「図書館で行う認知症カフェの挑戦」〜社会教育と福祉のコラボレーションの可能性〜

 発表者:直方市立図書館 館長 野口 和夫 氏
 直方市立図書館長の野口和夫氏には、他部局と連携した「認知症カフェ」の取組について発表していただきました。               
 これまで図書館で実施する事業は、児童向けまたは読み聞かせ講座などの児童に接する大人向けのものが中心で、一般の大人向け事業が少ないという課題がありました。直方市立図書館では、「直方市地域包括支援センター」、「認知症サポーターを広める会」の協力を得て他部局とのコラボレーションを行い、「図書館から広がる!つながる!認知症カフェ 図書館」をタイトルとした認知症普及啓発事業を企画し、認知症カフェ図書館や、認知症サポーター養成講座を定期開催しています。また、認知症図書コーナーの継続設置や認知症関係の本の展示、パンフレット等の設置を行い、認知症の理解の促進や啓発に取り組んでいると説明がありました。
 他部局とのコラボレーションにより、普段、図書館利用していなかった方の参加が増えたり、図書館を利用する団体より認知症サポーター養成講座開催の要請があり他機関への橋渡しができたりする等の成果があったとお話がありました。

【研修2】〈講義〉「学びの循環がつくる『幸齢社会』の実現を目指して」

 講師:中央教育審議会委員 放送大学特任教授・福岡学習センター所長 菊川 律子 氏
  午後からの講義では、中央教育審議会委員・放送大学特任教授福岡学習センター所長の菊川律子氏に、データを基に高齢者の実態や、学んだ成果を社会参画・社会貢献に活かす「学びの循環」について講義していただきました。
 2030年は3割が高齢者となることや、平均寿命と健康寿命の伸びから高齢者の体力等の若返りが起こっていること、国際成人力調査に見る日本の成人の学力はOECDの中で一番高く筋肉も脳も鍛えれば伸びること等から、社会人も高齢者も学べば伸び、そのためには試験が有効であるとデータを提示しながら説明がありました。
 また、「学びの循環」については、高齢期の学習や活動を促進する生涯学習・社会教育の役割が大切であり、高齢期の人づくり・つながりづくりと高齢者による地域づくりを推進していくためには、高齢者の本音や自身の必要性、楽しさを踏まえた学習機会の提供と活躍の場の設定と、それを支援する人材の確保が大切になるとお話がありました。

【演 習】〈グループ協議〉「コラボで考える〜高齢者を地域で活躍させる仕組みづくり〜」

 進行:  研修・情報室 社会教育主事

 演習では、グループ協議を行い、社会教育・生涯学習関係者と福祉関係者等が一緒のグループになり、地域で高齢者が活躍できる事業の企画に挑戦しました。
 グループで協力し、話し合いを通して様々な所属がコラボレーションした事業企画を考えてまとめていきました。各グループからは、様々な所属がコラボレーションしたアイデアあふれる興味深い事業企画がたくさんでました。その後、いくつかのグループに考えた事業企画を発表していただき、全体で学んだことを共有しました。
 参加者の方が違う立場の方々と意見交換をすることで、自分にはなかった視点や考え方を学ぶ場になり、有意義な演習になったようでした。
 

≪各グループの事業企画≫

※写真をクリックすると、大きく表示されます。  
「認知症ミュージアム」   「生き生きサポーター事業」 「Cグループ事業企画」
 「ご近所食堂」 「いきいき『だぶ』カフェ」  「Fグループ事業企画」 
 「気がつくと外出している
まちづくり」
 「身近な認知症事業」 「多世代マッチング事業
〜生き街づくり〜」
 
 「産官民の持続可能な福祉支援
プラットフォームの形成」
 「子どもと一緒に○○○」  「本の宅急便」
※写真をクリックすると、大きく表示されます。  

 参加者の声
【研修1】〜事例発表@〜 「いくつになっても学ぶ幸せ」〜高齢者の学びを地域で活かす「ちくしの高年大学」〜について
大学終了後のアフターフォローが参考になった。
高年大学の取組がよく分かった。特に、学ぶから学んだことを活かす視点が素晴らしいと思った。
市の支援はあるが、主体的な自主運営であることに意味があると思いました。
人材育成の視点で体系的に取り組んでこられている様子が、とても参考になりました。
ちくしの高年大学の仕組みがよく分かった。高齢者の自主運営はすごいですね。
学びの循環が必要という言葉に担い手の育成不足の手掛かりを感じた。
高齢者になっても学ぶことが自信や生きがいとなり、地域貢献ができ、社会資源につながることが理解できた。
60代、70代は、とてもお元気で、何かをしたいと皆さん感じていると思います。サークル活動とは違うという点に共感しました。
〜事例発表A〜「図書館で行う認知症カフェの挑戦」〜社会教育と福祉のコラボレーションの可能性〜について
図書館で認知症に取り組んでいるところは他にないでしょう。館長・職員の皆さん今後も頑張ってください。
とにかくやってみること、気づいた時から学べばいい等、前向きな話、力が湧きました。
会場が図書館というのが、斬新でした。図書司書さんに対してサポーター養成講座を実施したいと思います。
連携することで、様々な効果が生まれること、図書館のもつ限りない役割…大変参考になり、今からすぐ何かができるかも?と思えました。
図書館でサポーター養成講座を行うことで素早い専門機関との連携ができるというのは良かった。
図書館での認知症カフェの取り組み方は初めて聞きましたが、認知症に関わる方が増えることは素晴らしいと思いました。また、サポーターの活躍の場を見たようで、今後の参考になりました。図書館の捉え方も知りました。
「図書館」で行う視点がとても新鮮でした。老若男女関係なく認知症カフェを行うところが原点であると感じました。
社会教育施設(今回は図書館)とのコラボ!必要だよね!と今回改めて思いました。ありがとうございます。
【講義】「学びの循環がつくる『幸齢社会』の実現を目指して」について
新しい研究の情報を多く聞かせいただき、大変勉強になりました。
当事者のことを考えるのに、当事者抜きに考えられない。大事なことだと思いました。
高齢者と行政の大変難しい面があります。改めて、示された内容に重いものを感じました。
この領域に関わる人への「誇り」のようなものをいただいたように思います。
私は、健康の為に働けるうちは、働いていきたいと思っていましたが、これからも自信をもって仕事をしたいと感じました。また、これからの時間をどう使っていくか考えました。
高齢者を正確に理解する為に、データ等で説明をしてくださり、良く理解できた。高齢者に寄り添うことが重要。人づくり→地域づくり。
地域づくりの前に、縁を作っていくということ。このままだと自分が70代、80代になったときにさびしい老後になるなと痛感しました。
高齢者の本音に寄り添う、寄り添ってつくる生涯学習である。
【演習】「コラボで考える〜高齢者を地域で活躍させる仕組みづくり〜」について
他業種の方と様々な視点で意見を交流することは、自分自身の意識改革にもなった。
各地で実践していること、各担当部署の考え方等の交流は、とても参考になった。
予想以上におもしろかった。コラボって、こんなに短時間でアイデアが出せるものなんだと。
団体職員の違いがあるメンバーでこそ新しいアイデアが生まれるのだと思った。
包括支援センターの方がグループにおられ、普段、社会教育では聞くことができない話やネットワークを知ることができました。
異業種の方々との会話はとても楽しく、通じる部分もあり、おもしろいアイデアが結構出ていた。
大変楽しく参考になりました。コラボの良さを知りました。
みんなで考えた色々な事業が発表されて大変参考になった。