センターNEWS:TOP (平成21年度)

社会教育の風景 〜新しい息吹〜


 早いもので、社教センターのこぶしも桜も開花し、平成21年度の終わりを告げようとしています。
 本年度も多くの社会教育の関係者と出会い、また旧交を温めました。むろん、当人は自分のやっていることが社会教育活動だと意識されていない方もたくさんいらっしゃいます。しかし私共にとって、実に多くの学ぶ機会を与えていただける場面が頻繁に起こるものです。
 3月の初めに、NPO法人スチューデント・サポート・フェイスの代表谷口仁史氏を佐賀市にある「さが若者サポートステーション」に訪ねました。このNPO法人は、不登校、ひきこもり、ニート等の課題を抱える子どもや若者を対象に、アウトリーチと呼ばれ直接家庭を訪問する相談活動を中心に、フリースペースの運営や様々な就労支援、研修会・イベントの開催と精力的な活動を展開しています。40人くらいの職員のほか、ボランティアや多くの機関・企業の支援により運営されていました。
 取組の成果は非常に大きく、例えばアウトリーチ活動においては、派遣先の9割以上の家庭から学校復帰、脱ひきこもり、就労等客観的な改善の報告がなされていると伺いました。何よりも驚いたのは、代表の谷口氏がお見受けするところ30代半ばと大変若く、国の審議会委員に顔を出すなど広汎で積極的な行動家であることでした。昂らず整然とした紹介や説明の様子は、新しい開拓者の登場を見るおもいがしました。

 その1週間後に、福岡県鞍手町にある「南陵太鼓」の事務局を訪ねました。「南陵太鼓」というのは、20年以上も前に、荒れた中学校の立ち直りを学校、PTA、地域有志が手を携えて実現する過程で誕生した「南陵太鼓保存会」から発展したものです。
 この団体の特徴は、小さな中学校にもかかわらず、波乱の時期を経験した20名を超える卒業生の若者を中心に熱心な運営がなされており、演奏会の時期には50名くらいの青年が参画してくることです。現在まで、非常に高いレベルの和太鼓の演奏技術をもって、一貫して青少年の健全育成を行ってきました。中学校の敷地内に設けられた手作りの練習場に、仕事帰りに集まってくる青年たちは、いわゆる「かっこよく」、彼等を慕い活動に参加する小・中・高校生、その活動を地域の有志が丸ごと支えるという構図は、まるで「博多山笠」の世界を連想させるものでした。そして今、この想いは、さらに広い範囲の青少年の健全育成をめざしたNPO法人「南陵塾」の設立へと動き出しています。
 このように、年度の終わりに若く新しい社会教育の風を感じることができました。両者の活動は、平成22年5月15〜16日に当センターで開催される「第29回中国・四国・九州地区生涯学習実践研究交流会」で報告されます。多くの参加を期待しています。そしてともに、新しい時代を切り開く若い力の芽生えを感じ、社会教育の未来に向けて歩みを続けようではありませんか。
 最後に、当センターに対する本年度の御厚情を感謝いたすとともに、平成22年度も引き続き御指導と御鞭撻を賜ることお願い申し上げ、本稿を終えさせていただきます。
平成22年3月  副所長 黒田修三